最初に感じたのは、この作品を真の意味で理解することはできないんだろうなという淋しさ。
面白いという感想が出る前に、作者の人生を追体験しているような、積み上げられてきた知識や経験の物量の暴力が襲いかかる。薄っぺらな人生を送ってきた自分には、とてもよく効いた。
──作者と私では視えてる世界が違うのだ。私、作者の脳みそが欲s(ry
もちろん、物語としての面白さもあるが、それ以上に作者の内側に触れている感覚が強かった。そんな不思議な作品。
そのためか、読み終えた後は喪失感よりも、ひとつのアートを観終えたような満足感が残る。
それくらい作者の自我が前面に出た作品であるのに、いやらしく感じないのは『上伊那ぼたん』の世界観と作者がうまく融け込んでいるからなのだろう。ぼたん達は別の意味でいやらしいのだけども。
キャラクターも表情豊かで可愛らしく、ときどき入る崩した作画やオマージュもアクセントになっている。服装が話ごとに変わるところにもこだわりが感じられ、小物や背景の描き込みも丁寧で、文字通り”見る”だけでも楽しめる。
暗喩や行間が多く用いられる点も印象的で、この絶妙な間が繊細で儚げな空気を醸し出している。これが漫画表現のひとつの到達点なのではないかと思うほどの衝撃を受けた。読み返すことで新たな気づきもあり、何度でも反芻して彼の世界を堪能できる。
その中でも3巻に収録されている24話が特に良い。はっきりとは言葉にはされていないのに、ぼたんの心情の揺らぎが伝わってくる。とても詩的で好きな回。国語の教科書に載せてほしい。
と、まあ、お酒は呑めないので、せめて自分に酔いながらと書いてみました。あらためて読み返すとハズいね!

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